沖縄・那覇発ホエールスイムツアーで守るべきルールとマナー

~海の生き物と人が共に生きるために~
冬の沖縄。1月から3月にかけて、ザトウクジラたちは出産と子育てのために北の海から温かい沖縄の海へとやってきます。
那覇発のホエールスイムツアーでは、この雄大なクジラたちと同じ海で泳ぐという、人生でも忘れられないような感動的な体験ができます。
しかし、ホエールスイムは「ただ泳ぐだけのアクティビティ」ではありません。野生のクジラの生活を尊重し、彼らに負担をかけないようにするための厳格なルールとマナーが定められています。今回は、那覇発ホエールスイムに参加する前に必ず知っておきたいルールや心構えを、わかりやすく解説します。
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■ そもそもホエールスイムとは?
ホエールスイムとは、ボートからエントリーして海の中で野生のザトウクジラを観察するアクティビティです。
那覇発のツアーでは、チービシ諸島周辺や本島近海でクジラを探し、条件が整えば水面でのスイムを試みます。
ただし、クジラは人間の思い通りには動いてくれません。どれだけ探しても姿を見せてくれない日もあれば、スイムできない日もあります。
そのため、ホエールスイムでは「クジラが見えたらラッキー」「泳げたら奇跡」と思うくらいの心構えが大切です。
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■ 那覇発ホエールスイムの基本ルール
ホエールスイムでは、海洋生物保護の観点から、各地のガイドラインに沿ったルールが厳格に設けられています。
特に沖縄県内では、**環境省の定める「野生生物との適正な距離を保つための指針」**を参考に、ツアーごとに自主ルールが設定されています。
ここでは、那覇発ツアーで守られている主なルールをご紹介します。
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① クジラとの距離を保つ
ボートはクジラに近づきすぎないよう、距離を保つのが基本です。
直接近づくと、母クジラがストレスを感じたり、子クジラが驚いて潜ってしまうことがあります。
スイムエントリーを行う際も、必ず船長やガイドの指示のもと、クジラの進行方向に先回りする形でエントリーします。
自分から追いかける行為は絶対に禁止です。
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② スイムは1回のチャンスを大切に
クジラに会えたとしても、スイムのチャンスは数回程度。
むやみに何度も海に入ると、クジラの負担になります。
1回1回を大切に、静かに観察する気持ちが必要です。
また、泳げるのはガイドが「OK」を出した時だけ。
独断で海に飛び込む行為は、他の参加者の安全を脅かすだけでなく、クジラに迷惑をかける行為にもなります。
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③ 水中での接近は禁止
クジラの姿が見えたとしても、自分から近づくことはできません。
**ガイドが決めた距離(おおよそ30〜50メートル以上)**を保ち、クジラが自分から寄ってくる場合のみ観察可能です。
ザトウクジラは体長15メートルを超える大型の哺乳類。
尾びれ一振りで人間が大きく流されるほどの力を持っています。
安全と尊重のためにも、こちらから動かず「待つ姿勢」が大切です。
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④ 泳ぐ際の装備は必須
那覇発ホエールスイムでは、ウェットスーツ・マスク・シュノーケル・フィンが必須装備です。
ライフジャケットは着用しません。
また、スーツを着ることで体温低下を防ぎ、クラゲなどから肌を守る効果もあります。
安全に楽しむために、装備は必ず整えましょう。
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⑤ クジラへの接触・音・フラッシュは禁止
クジラに触れる、音を出して呼ぶ、水を叩くなどの行為は厳禁です。
また、水中カメラでの撮影時にフラッシュやストロボを使用することも禁止されています。
クジラは音に敏感な動物です。人間の出す小さな音でも、彼らには大きなストレスになります。
静かに、自然のままの姿を観察することが最も大切です。
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⑥ 環境に配慮する
那覇発ツアーでは、ゴミやプラスチックを海に落とさないことが大前提です。
また、日焼け止めを使う場合は**環境に優しい「リーフセーフタイプ」**を選びましょう。
海洋生物やサンゴへの影響を最小限にするための配慮が求められます。
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■ クジラの行動を理解しておこう
クジラの行動を知ることで、スイムの成功率や安全性がぐっと高まります。
特に那覇近海のチービシ周辺では、母クジラと子クジラのペア、またはオスクジラの競争行動がよく見られます。
母子クジラ:子を守るために警戒心が強く、人が近づきすぎるとすぐに潜ります。
ブリーチング(ジャンプ):子クジラが遊びながらジャンプすることもありますが、スイム中は遠くから静かに見守りましょう。
ソング(歌):オスクジラが発する鳴き声。運が良ければ水中で聞けることもありますが、録音行為は慎重に行う必要があります。
クジラの行動を理解することが、ルールを守る第一歩です。
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■ ガイドの指示が最優先
ホエールスイムでは、どんな状況でもガイドや船長の指示が最優先です。
ガイドはクジラの動きや海況、参加者の安全を常に見ながら判断しています。
「少ししか見えなかった」「もっと泳ぎたい」と思っても、ガイドが中止を判断したら必ず従いましょう。
それが、クジラにも人にも優しい選択です。
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■ まとめ:クジラと“共に泳ぐ”ための心構え
那覇発ホエールスイムは、沖縄の冬の海でしか味わえない特別な体験です。
けれども、その体験は「野生のクジラにお邪魔させてもらっている」ことを忘れてはいけません。
クジラに優しい距離を保ち、静かに海の中で待つ。
その先に、目の前をゆったりと泳ぐ巨大なシルエットを見られたとき、きっと心から感動するでしょう。
ルールを守ることは、クジラとの最高の出会いを引き寄せる最善の方法です。
そしてその体験が、次の世代のクジラたちへとつながっていくのです。